お知らせ・コラム

営業の属人化を解消する方法とは?物流業界23年のプロが10人の管理者全員と話して見えた本質

営業の属人化が解消できない会社の共通点。「社長の指示に誰も従わない」現場

「10箇所の営業所があって、それぞれに管理者がいます。社長が『来期予算の提出をいついつまでにメールでください』と発信しても、誰一人、期日までに返信が来ない。問い合わせも来ない。電話しても折り返しがない。『忙しいから会議欠席する』と平気で言ってくる」

これは、私が実際に支援した、ある物流企業の話です。

社長は頭を抱えていました。

「市川さん、もう限界なんです。指示を出しても、誰も動かない。新しい仕事を増やしたいけど、今の組織体制では無理です。どうしたらいいんでしょう…」

このような会社は、決して珍しくありません。

社長と現場の管理者の間に深い溝がある。
営業のやり方が、完全に属人化している。
ベテランの頭の中にしかノウハウがなく、若手が育たない。

もし、あなたの会社も似たような状態にあるなら、この記事が何かのヒントになるかもしれません。

今日は、私が実際に現場で行った「営業の属人化を解消する方法」について、お話しします。

営業属人化の本質は「ノウハウ不足」ではなく「信頼関係の欠如」だった

冒頭の会社から依頼を受けたとき、私が最初にやったことは何か?

「10箇所の営業所があるなら、10人全員と話します」

そう社長に伝えました。

多くのコンサルタントは、まず会議室で話を聞き、分析し、提案書を作ります。

しかし、私は違います。

営業の属人化を解消するには、「誰が、何を、どうやっているのか」を現場で見なければ、絶対にわからないからです。

そして、私は10箇所の営業所を一つひとつ訪問し、管理者たちと面談しました。

「とりあえず、愚痴でも何でもいいから、全部聞きますよ」

そう伝えると、彼らは堰を切ったように話し始めました。

「社長は現場のことを何もわかっていない」
「上から一方的に指示を出されるだけで、こっちの意見は聞いてもらえない」
「できもしない予算を押し付けられて、もう疲れました」

社長と管理者の間に、相当な溝があったのです。

そして、私は気づきました。

この会社の問題は、「営業スキル」ではない。「信頼関係」が壊れているのだ。

営業の属人化を解消しようと、多くの会社がこう取り組みます。

「営業プロセスを標準化しよう」
「CRMツールを導入しよう」
「マニュアルを作ろう」

しかし、現場がそもそも動く気がないなら、どんな仕組みを作っても機能しません。

属人化の本質は、「ノウハウが共有されていないこと」ではありません。

「情報を開示できる信頼関係がないこと」なのです。

私が10箇所の営業所で実践した属人化解消のプロセス

10人全員と話した結果、私はあることを決断しました。

10人いっぺんには変えられない。まずは、一人を選ぼう。

10人の中から、「この人だったらいけるかな」という人を一人選びました。

その管理者は、社長に対して不満は持っていましたが、会社を良くしたいという気持ちも強く持っていました。

私は、その人に寄り添って、こう伝えました。

「あなたの言い分もわかります。でもね、社長もあなたたちのことを考えているんですよ。ただ、うまく伝わっていないだけなんです」

「一緒に、少しずつ変えていきませんか?」

最初は半信半疑でしたが、私が何度も現場に足を運び、話を聞き、一緒に考えることで、徐々に彼の態度が変わっていきました。

そして、その管理者が変わると、他の管理者にも影響が出始めました。

「あいつが動き始めたなら、俺もやってみるか」

時間はかかりましたが、これをやるしかなかったのです。

属人化解消で最も重要な「一人目の選び方」

では、どうやって「この人だったらいけるかな」という一人を選ぶのか?

私が見ているポイントは、以下の3つです。

①会社を良くしたいという思いがあるか

不満を持っていても、「どうせ何も変わらない」と諦めている人ではなく、「本当は変わりたい」という気持ちが残っている人を選びます。

②影響力があるか

その人が動くことで、他の管理者も「じゃあ俺も」と動き出すような、現場での影響力を持っている人を選びます。

③素直に話を聞いてくれるか

外部の人間である私の話を、「まあ、一回聞いてみるか」と思ってくれる柔軟性がある人を選びます。

この3つの条件を満たす人を、10人の中から見つけ出すのです。

営業の属人化を解消する3つのステップ|現場介入の具体的手法

では、具体的にどうすれば、営業の属人化を解消できるのか?

私が実践している方法を、3つのステップでお伝えします。

ステップ①:過去を徹底的に振り返る

まず、やるべきことは「過去の成功と失敗を言語化する」ことです。

これまでの取引先を振り返り、以下のことを整理します。

  • なぜ、あの会社とはうまくいったのか?
  • なぜ、あの会社とは契約に至らなかったのか?
  • 期待に応えられたこと、応えられなかったことは何か?
  • その原因は、自分にあったのか? 相手にあったのか?

私自身、これまで20数社の企業と取引をしてきました。

すべてがうまくいったわけではありません。

期待に応えられなかった会社もあります。

しかし、その「なぜ?」を、きちんと振り返って言語化したことがあるか?と問われれば、長い間、答えは「NO」でした。

なんとなくは感じている。「多分こうやな」っていうのはわかっている。

でも、きちんと出力できていない。

これが、属人化の最大の原因です。

「なんとなくわかってる」では、若手に伝わりません。

「この場合はこうする」「あの場合はああする」という具体的な判断基準を、言葉にして共有する必要があるのです。

ステップ②:「誰のための会社なのか」を明確にする

振り返りを通じて、こんなことが見えてきます。

「自社が本当に力を発揮できる相手は、誰なのか?」

物流業界には、約75,000社もの事業者が存在します。

でも、すべての会社が、あなたの会社のサービスを必要としているわけではありません。

私の場合、振り返りを通じて、こんなことが見えてきました。

「私が支援できるのは、『営業の仕組み化』に課題を感じている中小物流企業だ」

もっと言えば、「社長は前向きだけど、現場がついてこない」という会社。

あるいは、「新しい仕事を増やしたいけど、組織体制が整っていない」という会社。

そういう会社にしか、私は価値を提供できません。

だから、最近は商談の前に必ずこう伝えるようにしています。

「御社に対してご提供できる独自の価値はこういうことですよ」
「ただし、こういう情報を開示していただけないと、おそらく期待に応えられません」

最初にこれを伝えておくことで、合わない会社は最初から契約しないようにしています。

逆に、合う会社とだけ、深く関わることができます。

結果的に、値引き交渉もほとんどなくなりました。

ステップ③:「情報を開示してもらえる関係」を作る

ここが、最も重要なポイントです。

情報を開示してもらえないと、上っ面の活動にしかならず、滑ってしまう。

私が支援した企業の中には、社長は協力的だけど、現場の管理者が情報を隠すケースがありました。

「市川さんは外部の人間だから、そこまで教えられない」
「恥ずかしいから、できていないことは見せたくない」

そういう警戒心があるのです。

この場合、社長がどれだけ望んでも、私は結果を出せません。

だからこそ、私は最初に必ず現場の管理者と話をします。

「とりあえず、愚痴でも何でもいいから全部聞きますよ」

そうやって、少しずつ信頼関係を作っていくのです。

時間はかかります。

でも、この信頼関係がなければ、どんな仕組みを作っても機能しないのです。

なぜ「現場で一緒に動く」ことが営業属人化の解消に不可欠なのか

私が他のコンサルタントと決定的に違うのは、「現場で一緒に動く」ことです。

会議室で提案書を作るだけでは、営業の属人化は解消できません。

なぜなら、優秀な営業マンがやっていることは、「無意識」だからです。

本人も、「当たり前」だと思ってやっていることが、実は極めて高度なスキルだったりします。

それを、現場で一緒に動きながら、一つひとつ言語化していく。

これが、私の仕事です。

現場で一緒に動くと見えてくること

例えば、冒頭の会社では、私は社長の指示が現場に届かない理由を、現場で一緒に動くことで発見しました。

社長の言葉が、現場にとっては「押し付け」に聞こえていたのです。

社長は「新しい仕事を増やしたい」と言います。

しかし、現場の管理者は「今でも人手が足りないのに、これ以上仕事を増やされても困る」と感じていました。

社長と管理者で、前提条件が全く違ったのです。

これは、会議室で話を聞いているだけでは、絶対にわかりません。

現場に行って、管理者の本音を聞いて、初めてわかることです。

そして、私はその「前提条件のズレ」を埋めるために、社長と管理者の間に入って、橋渡しをしました。

「社長は、あなたたちを苦しめたいわけじゃないんですよ。ただ、会社を成長させたいと思っているだけなんです」

「でも、今の体制のままでは無理だということも、社長はわかっています。だから、一緒に体制を整えていきましょう」

そうやって、少しずつ、社長と管理者の距離を縮めていったのです。

これは、ハウツーでできることじゃない。テクニックじゃない。

現場で一緒に動くからこそ、できることなのです。

営業属人化の解消で得られる成果|若手育成と組織力強化

営業の属人化を解消すると、どんな成果が得られるのか?

私が支援した企業では、以下のような変化が起きました。

成果①:若手が自ら動き始める

営業の型ができると、若手は「何をすればいいか」が明確になります。

「とにかく頑張れ」ではなく、「この順番で、このリストに連絡してみて」と伝えられるからです。

結果、若手が自ら考えて動くようになります。

成果②:ベテランが「自分にしかできないこと」に集中できる

属人化を解消することは、決してベテランの価値を下げることではありません。

むしろ、ベテランが一番楽になるのです。

すべてを自分でやろうとするから、疲弊する。
すべてを自分の頭の中だけで管理しようとするから、不安になる。

しかし、「型」を作り、言語化することで、誰かに任せることができるようになります。

そして、ベテランは「自分にしかできないこと」に集中できるようになるのです。

成果③:会社全体の営業力が底上げされる

属人化が解消されると、会社全体の営業力が底上げされます。

一部のエース頼みではなく、誰もが一定レベルの営業ができるようになるからです。

結果、売上が安定し、経営の予測可能性が高まります。

あなたの会社の営業は、明日から変えられる

「自分がいないと回らない」

その状態は、決してあなたの「強み」ではありません。

むしろ、あなた自身を縛りつけている鎖です。

しかし、属人化を解消することは、決して難しいことではありません。

やるべきことは、シンプルです。

  1. 過去を振り返る
    これまでの取引先で、何がうまくいって、何がうまくいかなかったのかを言語化する。
  2. ターゲットを決める
    自社が本当に力を発揮できる相手は誰なのかを明確にする。
  3. 現場の信頼関係を作る
    情報を開示してもらえる関係を、時間をかけて築いていく。

この3つを実践するだけで、若手への指導は格段にやりやすくなります。

そして、あなた自身が「自分にしかできないこと」に集中できるようになります。

営業の属人化は、「仕組み」で解決できる。

しかし、その前に必要なのは、「現場で一緒に動く覚悟」です。

私の23年のキャリアが、そのことを証明しています。

物流業界の営業に関するお悩みの解決方法はこちら

記事一覧に戻る